はじめに

日本では、障害者雇用に関する法律が整備され、雇用の機会が増えていますが、精神障害を抱える方にとっての就職活動は依然として難しい側面があります。特に、精神障害者の障害者雇用は、心身の負担を考慮した働き方や、職場環境の整備が必要であり、就職活動自体が大きなチャレンジとなることがあります。しかし、正しいアプローチと準備があれば、成功することは十分に可能です。今回は、精神障害者の障害者雇用における現状のデータと、就職活動を成功させるためのポイントについて解説します。


1. 日本における精神障害者の障害者雇用の現状

1-1. 精神障害者雇用の増加

近年、日本における精神障害者の障害者雇用は拡大しており、精神障害者の雇用者数は増加しています。厚生労働省のデータによると、2018年から精神障害者が障害者雇用の法定雇用率に含まれるようになり、企業の受け入れ体制が強化されました。

2023年のデータでは、精神障害者の雇用者数は増加傾向にあり、企業全体の障害者雇用率も高まっています。特に、企業が障害者の受け入れを促進するためのサポート体制や、障害者向けの相談窓口なども整備されつつあります。

  • 法定雇用率: 2023年の法定雇用率は民間企業で2.3%、公的機関で2.5%とされており、精神障害者の雇用もこの枠に含まれています。
  • 精神障害者の雇用者数: 2022年度は約63,000人が障害者枠で雇用されており、増加しています。

1-2. 雇用環境の改善と課題

精神障害者の雇用環境は改善が見られる一方、職場での配慮やサポート体制の不足が課題となる場合もあります。企業の中には、精神障害についての理解が深まっていないところもあり、就職後の職場適応やメンタルヘルスケアが不十分な場合があります。そのため、適切な職場環境を見つけるためには、企業のサポート体制を見極めることが重要です。


2. 精神障害者の就職活動の難しさとは?

2-1. 精神障害を理解する企業の数が限られている

精神障害は見た目に現れにくいため、障害を理解してくれる企業が限られているのが現実です。身体障害や知的障害に比べて、精神障害者に対する理解や配慮が不十分な企業も少なくありません。また、職場のストレスや環境の変化が精神的な負担を増加させる可能性もあり、就職活動を難しくしている要因となっています。

2-2. 働き方の選択肢が限られる

精神障害者にとって、働き方の柔軟性が重要ですが、多くの企業はフルタイムや定型的な働き方を前提にしているため、就業条件が合わない場合があります。例えば、リモートワークや短時間勤務が可能な職場はまだ限られており、こうした選択肢を提供している企業を見つけることが難しい状況です。

2-3. 精神的な負担が大きい

就職活動自体が精神障害者にとっては大きなストレスとなる場合があります。書類選考や面接でのプレッシャー、また企業に対して自身の障害をオープンにするかどうかの判断など、精神的な負担がかかる場面が多いです。そのため、無理をして就職活動を進めることで、逆に体調を崩してしまうリスクも考慮しなければなりません。


3. 精神障害者の就職活動で成功するためのポイント

3-1. 自分に合った働き方を明確にする

まずは、自分の体調や働き方に合った条件を明確にすることが大切です。どのくらいの時間働けるのか、どのようなサポートが必要かを具体的にリストアップし、無理のない範囲で働ける企業を探しましょう。例えば、フレックスタイム制やリモートワークを導入している企業、あるいは障害者専用の雇用形態を提供している企業を優先的に選ぶと良いです。

3-2. サポート体制が充実した企業を選ぶ

企業によっては、精神障害者向けのサポート体制が整っている企業も増えています。就職活動の際には、障害者雇用に力を入れている企業や、障害者のメンタルケアに取り組んでいる企業を探すことが重要です。具体的には、障害者雇用を専門にサポートする人事部門があるかどうかや、カウンセリングや相談窓口が整備されているかを確認すると良いでしょう。

3-3. 公的機関や就労支援サービスを活用する

精神障害者の就職活動を支援するための公的機関や就労支援サービスが多数存在します。ハローワークや就労移行支援事業所を利用することで、自分に合った仕事を見つけるためのサポートを受けられます。これらのサービスを利用すれば、無理のないペースで自分に合った就職先を探すことができるでしょう。

  • ハローワークの障害者専門窓口:専門のスタッフが就職相談に乗ってくれます。
  • 就労移行支援事業所:就職に向けたスキルや知識を学ぶことができ、実際の就職活動もサポートしてもらえます。

3-4. 精神保健福祉士の資格を活かす

精神保健福祉士の資格を持っている場合、この資格を活かした福祉関連の職業メンタルヘルス関連のポジションを探すことも有効です。福祉業界や医療機関では、あなたの資格と経験が大きな強みとなり、比較的障害に理解のある職場環境で働くことができるでしょう。


まとめ

精神障害者の障害者雇用での就職活動は、確かに難しい側面がありますが、正しいアプローチとサポート体制を活用することで、成功する可能性は十分にあります。自分に合った働き方を明確にし、障害に対する理解やサポートが整った企業を選ぶことが重要です。また、公的機関や支援サービスを活用しながら、無理のないペースで活動を進めることで、精神的な負担を減らしながら就職活動を進めることができます。

精神保健福祉士の資格を活かした仕事も視野に入れ、これからのキャリアを積極的に築いていきましょう。