障害者雇用における精神障害者の採用は、依然として厳しい状況にあると言えます。企業の採用枠や法定雇用率の達成などの面で改善は見られるものの、他の障害種別に比べて精神障害者の就職には依然として多くの課題が残っています。この記事では、最新データを基に精神障害者の障害者雇用枠での現状と課題を解説し、採用の難しさや今後の展望について考察します。

1. 精神障害者の雇用状況の現状

2024年現在、精神障害者の雇用状況は年々改善されており、全体の雇用者数は増加傾向にあります。厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」の結果によれば、精神障害者の雇用者数は21万5,000人で、前回調査(平成30年)と比べて増加しています【41】。また、民間企業における精神障害者の雇用者数も、前年比18.7%増の約13万人に達し、他の障害種別に比べて大きな伸びを見せています【40】。

この増加は、2018年に精神障害者が障害者雇用義務の対象に加わり、企業が法定雇用率を達成するために精神障害者を積極的に雇用していることが一因です。2024年現在の法定雇用率は2.3%で、今後も段階的に引き上げられる予定です【40】。

2. 精神障害者雇用の難しさと課題

精神障害者の雇用が増加しているとはいえ、就職活動において依然として難しさを感じる人が多いのも事実です。これは、以下のような要因が絡んでいるためです。

2.1 企業側の理解不足

精神障害に対する理解が不十分な企業が多く、適切な業務内容や職場環境を提供できないことが課題です。特に中小企業では、障害者雇用の受け入れ体制が整っていないことが多く、採用に慎重になることがあります【40】。

2.2 職場での配慮とサポートの不足

精神障害者が働く上で、定期的な面談やストレスケア、柔軟な労働時間の設定などの配慮が必要です。しかし、こうしたサポート体制を整備している企業はまだ少数派です。そのため、採用後も適応に苦労し、離職率が高くなる傾向があります【39】。

2.3 短時間労働のニーズ

精神障害者の中には、長時間勤務に耐えられない方も多く、短時間労働を希望するケースが多く見られます。厚生労働省の調査によれば、精神障害者のうち半数以上が週30時間未満の短時間労働を希望しているというデータもあり、これが正社員採用の割合が低くなる要因となっています【39】。

3. 採用状況の改善と今後の展望

採用が厳しい状況にあるとはいえ、精神障害者の雇用状況は確実に改善しています。大企業では、独自のサポート制度や職域開発を行うことで、精神障害者を積極的に受け入れています。例えば、特例子会社を設立して障害者雇用に特化した部署を設置し、就労支援を行うケースも増えています【40】。

また、就労移行支援などの就労支援サービスも充実しており、これを活用することで、精神障害者が自分に合った職場を見つけやすくなっています。こうした支援機関では、就職活動のサポートや企業とのマッチングを行い、就労後も定着支援を提供しています【39】。

4. まとめとアドバイス

精神障害者の障害者雇用枠での採用は、依然として狭き門であり、採用されるためにはいくつかのハードルがあります。しかし、法定雇用率の引き上げや企業の理解が進む中で、雇用の機会は増加しています。就職活動においては、以下のポイントに注意し、自分に合った職場を見つけることが重要です。

  • 就労移行支援などのサポートを活用する: 支援機関を利用して自己理解を深め、企業とのマッチングを行いましょう。
  • 企業の理解度を見極める: 障害者雇用に積極的な企業を選び、サポート体制や業務内容について事前に確認しましょう。
  • 柔軟な働き方を交渉する: 短時間勤務やリモートワークなど、柔軟な働き方を希望する場合は、面接の段階で企業に伝えておくことが重要です。

今後も障害者雇用に対する社会的な理解が進み、精神障害者が安心して働ける環境が整備されることを期待しています。